ここは久住の山合いにあるオーベルジュKOYAMA.
冬の間、景色は墨汁の世界。
そこにも再び春色が
寒さに抑えられていたものが、一気にほこってきた。
オープン当時に植樹した桜が馴染むくらい、
いつの間にか歳月が流れておりました。
石積みされている厚い壁
そこに見える、杉林の闇は春こそ深く濃い。
冬は白くどっさりと雪をかぶり、宿の朝食がいつもに増してひどく温かく感じる。
この日の杉林はまた格別で、美しい背景だった。
朝食をサーブし終えたシェフが、イスに腰掛け、静かに語ってくれる。
外は春風がやまないのだろう。
白い花びらが、雪かと思うくらい、横なりに散り落ちていく。
どう生きても、わたしたちは死にゆく。
明日は、シェフの娘さんの結婚式が、
この森の中に忽然とあらわれたフランス屋敷で行われる。