「鳥に食べられっからッ」
私が急いているのではなく、鳥に急かされている母がわたしにそういいながら
バケツを渡してくれた。
今年の夏も、そうとう暑かったというのに。
よくもまぁ、灼熱をうけて熟された果樹。
井戸水をざんぶりかけて、泳がせ、ざぱーっとすっきりした表情を魅せる。
「それで、ところであんた、わたしをどうすんのさ」と黄色い王冠を振りかざして
きっぱりと、切り込んでくる。
去年や、その前の年、あなたがまだ幼稚園に通う頃は、パンがおやつになるように
ジャムにしていたわね。2月のバレンタインにはチョコレートと金柑の組み合わせを
焼き菓子にして、父にも食べてもらった。
その父は3か月前に「あんなに早く逝かなくてすんだのに」そう母にいわせて。
今までは、種もそのままでまるごと煮ることしか、しなかった。余裕がもてなくて。
でも、今年はコンポートと金柑酵素にしてみよう。
種も取ってみよう。
成長と老いに消費していた時間。
まるでぽっかり空いたのを、うめるように働く台所。
冬至になる前に、母から手渡された山の柚子も酵素ジュースにした。
【柑橘酵素ジュース作り方】
①柑橘 1㎏
②きび砂糖 1㎏
種は取ってもよし、取らなくてもよし、柚子は4分の1に、金柑なら2分の1に切る。
保存瓶にきび砂糖を入れて、あとは切った果樹ときび砂糖を交互に入れる。
一日1回、手でかき混ぜる。(20回程度、底から混ぜる)
砂糖がとけたら、完了。
冷蔵庫で保存すると、発酵がとまる。
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